脂質キュービックフェーズ法: LCP法(脂質メソフェーズ法)を利用した膜タンパク質の結晶化

東京大学・大学院理学系研究科

The crystallization of membrane proteins using lipidic cubic and sponge phases (lipidic mesophases)
The university of Tokyo
Hideaki E. Kato

  • キーワード構造生物学膜タンパク質結晶化脂質キュービックフェーズ法脂質メゾフェーズ法
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概要

膜タンパク質の立体構造は、基礎研究対象としても創薬ターゲットとしても非常に重要性が高いが、その構造解析は一般的に困難とされている。その理由の一つに、水溶性タンパク質と異なり、可溶化状態の膜タンパク質はその大部分を界面活性剤に覆われているということが挙げられる。このため、通常の蒸気拡散法を用いた膜タンパク質の結晶化の場合、パッキングに寄与出来る表面積が少なくなる、結晶中のタンパク含有率が低くなるなどの理由から良質な結晶が得られにくいことが多い。本稿ではそうした通常の蒸気拡散法に代わって考案され、近年非常に広範な膜タンパク質ターゲットに於いて成功を収めつつある、脂質キュービックフェーズ法(LCP法)と呼ばれる結晶化法の詳細について解説を行う。

*キュービック相とスポンジ相を併せた脂質メソフェーズ法と呼ぶ方がより正確だが、今回はLCP法の呼称で統一する。

イントロダクション

タンパク質の立体構造は生命現象の理解や新規薬剤の設計等にあたって多くの情報を我々に与えてくれるが、その構造解析、特に膜タンパク質の構造解析には未だ様々な困難が付き纏っているのが現状である。また、立体構造が得られた場合でも、水溶性タンパク質と比較してその分解能は総じて低いのが通例であった。その原因の一つに、可溶化状態の膜タンパク質は界面活性剤に覆われているため、従来の結晶化法である通常の蒸気拡散法を用いた場合、パッキングに寄与出来る表面積の問題等から良質な結晶が得られにくいということが挙げられる。

今から約17年前の1996年、Landau博士、Rosenbusch博士が通常の蒸気拡散法とは異なる結晶化法、すなわち、3次元的に連続した脂質二重層に膜タンパク質を再構成してから結晶化を行うLCP法を考案した(1)。考案当初は一部の膜タンパク質にのみ適用されて来たこの結晶化法だが、2007年にStevens博士、Kobilka博士らがこの方法を用いてG タンパク質共役型受容体(GPCR)であるβ2アドレナリン受容体の構造解析に成功したのをきっかけに、近年急速に注目を浴びつつある(2,3)。実際この手法によって真核生物由来のチャネルタンパク質であるチャネルロドプシン(4)、二次能動輸送体であるNa+/Ca2+交換体(5)、そしてβ2アドレナリン受容体-Gタンパク質複合体(6)といった真核生物由来の巨大分子複合体の構造解析などが成功していることから、本手法の適用可能範囲は当初の予想よりも幅広いであろうことが判明しつつある。また、本手法を用いて解かれた膜タンパク質は総じて分解能が高いという点も、注目を浴びる一因となっている。本稿では原核生物、真核生物由来の膜タンパク質の高分解能結晶構造解析を目的としたLCP法の詳細について紹介したい。

装置・器具・試薬

装置

  • ブロックインキュベーター(BI-516S、ASTEC)
  • サーモレギュレーター(CTR-420、IWAKI)

器具

  • アンプル管 アンプルカッター(5-124-12、アズワン)
  • MICROMAN M50(F148503、Gilson)
  • Capillary Piston for MICROMAN CP50(F148113、Gilson)

  • Hamilton gas-tight syringe 100μL x 2本(1710RN 81030、Hamilton Research)
  • Hamilton gas-tight syringe 10μL x 1本(1701RN 80030、Hamilton Research)
  • LCP Syringe Coupling 3072-01050(2-2203-11、アズワン)
  • Hamilton RN Needles(22/2”/3)S(7770-02、Hamilton Research)
  • Hamilton RN Needles(26/0.375”/3)(7804-03、Hamilton Research)
  • Hamilton PB-600 Repeating Dispenser(83700、Hamilton Research)

  • Micro slide glass 76x26 mm, 0.8-1.0 mm(S1126、MATSUNAMI)
  • Fisherfinest Premium Cover Glass 60 x 24 mm(12-548-5P、Fisher Scientific)
  • 96穴両面シール アクリル系(特注(図1)、和研薬)

  • Capillary Cutting Stone(HR4-334、Hampton Research)
  • Needle Probe Set, 4 tools and 1 handle(#13650、Ted Pella)
  • 各種Micro mount(M1-L19-xx、MiTeGen)

試薬

  • Monoolein(M-239、Nu-Chek Prep)
  • Cholesterol(C8667、Sigma-aldrich)
  • Chloroform(08402-55、ナカライテスク)
  • 結晶化用タンパク質
  • 結晶化用タンパク質溶液と同じ組成のbuffer
  • 結晶化条件の溶液
  • ハーベスト溶液

実験手順

1)脂質の準備
2)プレートの準備(結晶化ロボットを使わない場合のみ必要なステップ)
3)LCPの調製と膜タンパク質の再構成
4)結晶化
5)結晶観察~結晶の回収

実験の詳細

1)脂質の準備

サーモレギュレーターを40℃にセットし、glass vialに入れた状態でMonoolein(MO)を融解する。MOが融解したら、アンプルカッターを用いてglass vialを切り、溶融したMOを30-35μL程度ずつ500μLチューブに分注する。この際、MOの粘性が高いため、MICROMANを用いると分注が容易になる。分注したMOは使用時まで-80℃に保存しておく。

(LCPの脂質ホストとしてMO+Cholesterolを用いたい場合)
空のテフロンキャップ付き2 mL vial(SIGMA, 27000)に、MOとCholesterolを重量比にして5:1から9:1になるように加える。この際、総重量が200mgを超えないようにする。200-400μL程度のChloroform溶液を添加し、MO+Cholesterolを完全に溶解する。その後、vial内に窒素ガスを吹き付け、Chloroformを飛ばす。

更にvialを一晩脱気し、残存するChloroformを飛ばす。最後にvial内に窒素ガスを吹き付け、使用時まで-80℃に保存しておく。

2)プレートの準備(結晶化ロボットを使わない場合のみ必要なステップ)

(結晶化ロボットを使用する場合、専用のプレートが各社から販売されているため、このステップは不要)

96穴両面シール アクリル系(以下、96穴アクリルシール)を6x2ウェル分ずつ8枚に切断する。切断したアクリルシールについて、片側のみシールを剥がし、Micro slide glass 76x26 mm に貼付ける。(Slide glassはシリコナイズされたものを使用することが推奨されているが、必須では無い。) 以上の要領でプレートを複数枚作製し、使用時まで保管しておく。

3)LCPの調製と膜タンパク質の再構成

ブロックインキュベーターを用い、40℃程度の温度で、-80℃に保存しておいたMO(MO+Cholesterolの場合も同様)を融解する。15-20分かかるため、その間に結晶化用タンパク質を超遠心し、細かいチリや不溶物を落としてしまうと良い。

Hamilton syringe 100μL、2本(それぞれシリンジA、Bと呼ぶ)を用意し、シリンジAにLCP Syringe Coupling(以下、カップラー)を接続する。シリンジA、カップリング、シリンジBの総重量を測定し、値をメモする。この際シリンジA、Bにteflon ferruleがはまっていることを確認しておく。

融解したMO 約30μLを200μLチップで吸い取り(粘性は高いがシリンジの奥に差し込めなくなるのでチップの先端は切らない)、シリンジA+カップラーの底部からなるべく泡が入らないようゆっくり入れる。その後、シリンジAの底部からプランジャーを差し込み、ゆっくり押し込んで行く。この時多少の泡はプランジャーを押し込む過程で抜けて行く。MOがシリンジA+カップラーの先端まで到達したら、その状態で再びシリンジA、カップラー、シリンジBの総重量を測定し、値をメモする。今回の測定値から先ほどの測定値を引き、MOの重量とする。

シリンジBにHamilton RN Needles(22/2”/3)S(以下、長針)を接続し、結晶化用タンパク質溶液と同じ組成のbufferで一度シリンジB内部を数回洗う。その後、同じ長針を付けたままMOの重量に対して重量比でMO:タンパク質溶液 = 6:4となるようタンパク溶液を吸う。この際シリンジB内部に泡が入らないよう注意する。シリンジ内部に空気が入らないよう注意しながらシリンジB先端の長針を外し、シリンジA+カップラーに接続する。

1秒に1回程度のペースでシリンジA、Bのプランジャーをそれぞれ押し込んでやる(目安は100-500回程度)。この過程でMOはLCPに相変化すると共に、LCPにタンパク質が再構成される。混合溶液が透明になったらLCPの調製、及び再構成完了である。

4)結晶化

(ここでは結晶化ロボットを使用しない結晶化法について紹介する。結晶化ロボットを使う際にはHamilton gas-tight syringe 10μL、Hamilton PB-600 Repeating Dispenser、Micro slide glass 76x26mm、Fisherfinest Premium Cover Glass 60x24mm 、96穴アクリルシールは不要となり、代わりに結晶化用プレートが別途必要になる)

Hamilton gas-tight syringe 10μL(以下、シリンジC)を Hamilton PB-600 Repeating Dispenser(以下、ディスペンサー)にセットする。この際プランジャーは根元まで押し込んでおく。ステップ3で調製したLCPをシリンジA、Bのどちらか片側に完全に寄せてから(ここではシリンジA側に寄せたとする)、シリンジBを取り外す。シリンジA+カップラーをシリンジCに接続し、シリンジAのプランジャーをゆっくり押し込む。この操作によってシリンジC内部にLCPが充填される。(一回に移せる量は7μL程度。)

シリンジCの先端からシリンジA+カップラーを取り外し、代わりにHamilton RN Needles(26/0.375”/3)(以下、短針)を接続する。乾燥を防ぐため、シリンジA+カップラーの先端には再びシリンジBを接続しておく。

ステップ2で作製したプレートを用意し、残った片面のシールを剥がす。ディスペンサーを使用して、プレートのウェルに200 nLずつ(タンパク質を含む)LCPをスポットする。(ディスペンサーはセットしたシリンジの1/50体積の溶液をスポットするようになっているため、10μLのシリンジをセットした今回のケースの場合、LCPの体積は1条件辺り200nLとなる。)

LCPの上に結晶化条件の溶液 1 μL を素早く被せる。この際LCPの乾燥を防ぐため、8連ピペットを利用すると良い(8連ピペットの6箇所にチップをはめる)。12ウェル全てにLCPと結晶化条件をスポットし終わったら、素早くFisherfinest Premium Cover Glass(以下、cover glass)を被せる。そのまま20℃の結晶化インキュベーターに保存する。

使用済のシリンジ、カップラー、短針、長針は100 %エタノールでよく洗浄する。汚れが落ちにくい時はChloroformを使うと良い。

5)結晶観察~結晶の回収

LCP法で結晶化を行った場合、結晶の析出には早くて数時間、遅くて1ヶ月ほどの時間がかかる。時間を見つけては小まめに観察を行うのが望ましい。観察の際には偏光顕微鏡を用いると微小結晶の発見が容易になる。コストの問題が解決出来れば、UV顕微鏡やSONICCシステム(7)を利用するのも有効だと思われる。図2にLCP法によって得られた微小結晶の例を示す。

結晶が得られ、その成長が停止した後は結晶を回収する必要があるが、その際、結晶の析出した条件におけるMOの状態相を見極めることが重要になる。

(i)沈殿剤の濃度が低く、MOの粘性が高い場合
MOの状態相はキュービック相のままであると考えられる。MOがクライオプロテクタントとして働くため、用意するハーベスト溶液は殆どの場合結晶化条件の組成そのままで良い。

(ii)沈殿剤の濃度が高く、MOの粘性が低い場合
MOの状態相はキュービック相からスポンジ相に変化していると思われる。サンドイッチ法で結晶化した場合、この状態相のまま結晶を回収するのは難しいため、結晶化条件の組成から沈殿剤濃度を下げたものを調製し、ハーベスト溶液とする。

(ただし、近年「状態相を変化させずに結晶を回収する方が好ましい」との意見も散見される。この場合結晶回収の難易度はあがるが、状態相の変化が結晶へ与える影響を最小限にすることが出来る。)

まず、Capillary Cutting Stone(以下、ガラスカッター)を用いて、ウェルに各頂点が接するような大きさの四辺形の傷をつける。次にNeedle Probe Set 4 tools and 1 handle(以下、ニードル)を用いて四辺形の対角の頂点2カ所に穴を空ける。一方の穴から3μL程度のハーベスト溶液を添加する。(ii)の場合、このステップでMOの状態相がキュービック相に戻る。

*特にこのステップについてはCherezov博士のLab HP(http://cherezov.scripps.edu/harvesting.htm)に図入りの解説が載っており非常に分かり易い。参考にして欲しい。

ニードルを用いて、注意深く、四辺形の傷を更に深くしていく。四辺形部分(以下、フタと呼ぶ)が完全に他の部分と別れたら、そのまま注意深くフタを裏返して剥がす。このとき、キュービック相がウェル側に残るかフタ側に残るかは分からないため、フタを勢いよく剥がしてどこかに飛ばしてしまわないよう細心の注意を払う。

キュービック相が付着した側にハーベスト溶液を更に2-3μL添加する。結晶の大きさに適したMicro mount loopを選び、キュービック相に埋もれた結晶を回収する。この際、脂質の持ち込みを極力減らすために別のmicro mountを用いてまず、目的結晶の周りの脂質を除いてやるのも一つの手である。

結晶を回収したloopを素早く液体窒素に浸け、loopを凍らせる。

工夫とコツ

LCPの調製

空調によって実験室の温度を一定に保っていても(20-25℃)、特に冬場にLCP法を行う場合、シリンジAにMOを入れてから、タンパク質を入れたシリンジBを接続するまでの間にMOが凝固してしまうことがしばしばある。そのまま力づくでプランジャーを押すことも可能だが、シリンジの摩耗を早め、最悪の場合シリンジを破損しサンプルをロスしてしまう危険性がある。こういった場合、シリンジA+カップラーをあらかじめMOと一緒にブロックインキュベーターで加温しておくと良い。

シリンジAとシリンジBを接続し、MOとタンパク溶液を混合する際、保冷剤や氷でシリンジを少し冷やしながら混合を行うとLCPの形成が促進されることがある。ただし、過度の冷却はMOを凍らせてしまい、タンパク質にもダメージを与えてしまうので注意する。

結晶化

LCPのスポット時に乾燥が気になる場合、加湿器を使用すると良い。ただし、マニュアルでの結晶化は、ロボットを使用する場合と比較してLCPのスポッティングからカバーガラスを被せるまでの時間が非常に短く、本プロトコルの方法ではLCPの体積も200 nLと比較的多いので結晶化室の湿度がある程度高ければ、必ずしも加湿器を利用する必要は無い。

本プロトコルではサンドイッチ法による結晶化を紹介したが、ある程度結晶化条件が定まった後はシッティングドロップ法による結晶化を試みるのも有効である。この場合、微小結晶を発見するのが難しくなる代わり、(特にスポンジ相からの)結晶回収が非常に容易になるというメリットがある。

初期スクリーニングに使用する結晶化条件についてよく質問を受けるが、市販のスクリーニングキットは通常の蒸気拡散法に最適化されているため、LCPを破壊してしまうような条件が多く含まれており、スクリーニング効率は余り高くない。現時点ではスクリーニング効率の問題に目をつぶるか、自作のスクリーニングキットを調製するのが良いかもしれない。(ただし、現在筆者らはLCP法に適した自作のスクリーニングキットを販売予定である。)

結晶観察

LCP法に慣れていない場合、塩の結晶や脂質の結晶とタンパク質の結晶の区別がつかない場合があるかもしれない。結晶の形や析出の仕方には様々なパターンが存在するが、一つ経験的に言えることは、LCPドロップの外側かつ結晶化条件溶液の内側に析出している結晶は、ほぼ確実にタンパク質の結晶ではないということである。同様に、LCPドロップ内に結晶が出ているが、同様の結晶がLCPドロップ外にも出ているといった場合も、その結晶はタンパク質由来ではないと考えてよいだろう。

結晶の回収

結晶がスポンジ相から得られた場合、脂質をキュービック相に戻すために沈殿剤濃度をどこまで下げるかが問題となる。沈殿剤濃度を下げすぎると結晶にダメージを与えてしまうが、沈殿剤濃度を下げなければ結晶をスポンジ相から直接拾うことになる。また、キュービック相とスポンジ相が互いに遷移する沈殿剤濃度は、沈殿剤の種類やその他の結晶化条件の組成によって左右されるため、この操作にはある程度事前の試行錯誤が必要になってくるということを留意しておきたい。(ただし、慣れればスポンジ相から結晶を直接回収することも可能であり、近年「状態相を変化させずに結晶を回収する方が好ましい」との意見も散見される。この方法の場合、結晶回収の難易度はあがるが、状態相の変化が結晶へ与える影響を最小限にすることが出来る。また、サンドイッチ法ではなくシッティングドロップ法で結晶化を行うことで、スポンジ相からの結晶回収を容易にすることが出来る。)

*シッティングドロップ法で結晶化を行う場合、LCPの容量や被せる結晶化条件の容量はサンドイッチ法と同様、それぞれ200 nL、1μLで問題ないが、最適化を行うことを強くお勧めする。リザーバー溶液の容量は500μL程度で十分である。
*PEG400の場合、25%前後の濃度がキュービック相とスポンジ相の分かれ目になる。

ハーベスト溶液を被せた後や、ウェルを開けた後には結晶を見失いやすいため、微結晶の回収時には、偏光板の入った顕微鏡を使用することを強くお勧めする。偏光の強い結晶の場合、10μm程度の微結晶であっても偏光板の入った顕微鏡を使用すれば結晶の回収は容易である。

実際の手順について

本プロトコルで説明した操作手順の多くは、オンラインジャーナルであるJournal of visualized experiments(JoVE)で実際に動画としてみることが出来る(8,9)。LCP法の手法に関する論文(10)と併せて是非参考にして欲しい。

文献

  1. Landau, E. M. & Rosenbusch, J. P., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 93, 14532-5 (1996)
  2. Cherezov, V. et al., Science 318, 1258-65 (2007)
  3. Rosenbaum, D. M. et al., Science 318, 1266-73 (2007)
  4. Kato, H. E. et al., Nature 482, 369-74 (2012)
  5. Liao, J. et al., Science 335, 686-90 (2012)
  6. Rasmussen, S. G. et al., Nature 477, 549-55 (2011)
  7. Kissick, D. J. et al., Anal. Chem. 82, 491-7 (2010)
  8. Caffrey, M. & Porter. C., J. Vis. Exp. 45, e1712 (2010)
  9. Liu, W. & Cherezov, V., J. Vis. Exp. 49, e2501 (2011)
  10. Caffrey, M. & Cherezov, V., Nat Protoc 4, 706-31 (2009)
  • 図1
  • 図2

概要

膜タンパク質の立体構造は、基礎研究対象としても創薬ターゲットとしても非常に重要性が高いが、その構造解析は一般的に困難とされている。その理由の一つに、水溶性タンパク質と異なり、可溶化状態の膜タンパク質はその大部分を界面活性剤に覆われているということが挙げられる。このため、通常の蒸気拡散法を用いた膜タンパク質の結晶化の場合、パッキングに寄与出来る表面積が少なくなる、結晶中のタンパク含有率が低くなるなどの理由から良質な結晶が得られにくいことが多い。本稿ではそうした通常の蒸気拡散法に代わって考案され、近年非常に広範な膜タンパク質ターゲットに於いて成功を収めつつある、脂質キュービックフェーズ法(LCP法)と呼ばれる結晶化法の詳細について解説を行う。

*キュービック相とスポンジ相を併せた脂質メソフェーズ法と呼ぶ方がより正確だが、今回はLCP法の呼称で統一する。

イントロダクション

タンパク質の立体構造は生命現象の理解や新規薬剤の設計等にあたって多くの情報を我々に与えてくれるが、その構造解析、特に膜タンパク質の構造解析には未だ様々な困難が付き纏っているのが現状である。また、立体構造が得られた場合でも、水溶性タンパク質と比較してその分解能は総じて低いのが通例であった。その原因の一つに、可溶化状態の膜タンパク質は界面活性剤に覆われているため、従来の結晶化法である通常の蒸気拡散法を用いた場合、パッキングに寄与出来る表面積の問題等から良質な結晶が得られにくいということが挙げられる。

今から約17年前の1996年、Landau博士、Rosenbusch博士が通常の蒸気拡散法とは異なる結晶化法、すなわち、3次元的に連続した脂質二重層に膜タンパク質を再構成してから結晶化を行うLCP法を考案した(1)。考案当初は一部の膜タンパク質にのみ適用されて来たこの結晶化法だが、2007年にStevens博士、Kobilka博士らがこの方法を用いてG タンパク質共役型受容体(GPCR)であるβ2アドレナリン受容体の構造解析に成功したのをきっかけに、近年急速に注目を浴びつつある(2,3)。実際この手法によって真核生物由来のチャネルタンパク質であるチャネルロドプシン(4)、二次能動輸送体であるNa+/Ca2+交換体(5)、そしてβ2アドレナリン受容体-Gタンパク質複合体(6)といった真核生物由来の巨大分子複合体の構造解析などが成功していることから、本手法の適用可能範囲は当初の予想よりも幅広いであろうことが判明しつつある。また、本手法を用いて解かれた膜タンパク質は総じて分解能が高いという点も、注目を浴びる一因となっている。本稿では原核生物、真核生物由来の膜タンパク質の高分解能結晶構造解析を目的としたLCP法の詳細について紹介したい。

装置・器具・試薬

装置

  • ブロックインキュベーター(BI-516S、ASTEC)
  • サーモレギュレーター(CTR-420、IWAKI)

器具

  • アンプル管 アンプルカッター(5-124-12、アズワン)
  • MICROMAN M50(F148503、Gilson)
  • Capillary Piston for MICROMAN CP50(F148113、Gilson)

  • Hamilton gas-tight syringe 100μL x 2本(1710RN 81030、Hamilton Research)
  • Hamilton gas-tight syringe 10μL x 1本(1701RN 80030、Hamilton Research)
  • LCP Syringe Coupling 3072-01050(2-2203-11、アズワン)
  • Hamilton RN Needles(22/2”/3)S(7770-02、Hamilton Research)
  • Hamilton RN Needles(26/0.375”/3)(7804-03、Hamilton Research)
  • Hamilton PB-600 Repeating Dispenser(83700、Hamilton Research)

  • Micro slide glass 76x26 mm, 0.8-1.0 mm(S1126、MATSUNAMI)
  • Fisherfinest Premium Cover Glass 60 x 24 mm(12-548-5P、Fisher Scientific)
  • 96穴両面シール アクリル系(特注(図1)、和研薬)

  • Capillary Cutting Stone(HR4-334、Hampton Research)
  • Needle Probe Set, 4 tools and 1 handle(#13650、Ted Pella)
  • 各種Micro mount(M1-L19-xx、MiTeGen)

試薬

  • Monoolein(M-239、Nu-Chek Prep)
  • Cholesterol(C8667、Sigma-aldrich)
  • Chloroform(08402-55、ナカライテスク)
  • 結晶化用タンパク質
  • 結晶化用タンパク質溶液と同じ組成のbuffer
  • 結晶化条件の溶液
  • ハーベスト溶液

実験手順

1)脂質の準備
2)プレートの準備(結晶化ロボットを使わない場合のみ必要なステップ)
3)LCPの調製と膜タンパク質の再構成
4)結晶化
5)結晶観察~結晶の回収

実験の詳細

1)脂質の準備

サーモレギュレーターを40℃にセットし、glass vialに入れた状態でMonoolein(MO)を融解する。MOが融解したら、アンプルカッターを用いてglass vialを切り、溶融したMOを30-35μL程度ずつ500μLチューブに分注する。この際、MOの粘性が高いため、MICROMANを用いると分注が容易になる。分注したMOは使用時まで-80℃に保存しておく。

(LCPの脂質ホストとしてMO+Cholesterolを用いたい場合)
空のテフロンキャップ付き2 mL vial(SIGMA, 27000)に、MOとCholesterolを重量比にして5:1から9:1になるように加える。この際、総重量が200mgを超えないようにする。200-400μL程度のChloroform溶液を添加し、MO+Cholesterolを完全に溶解する。その後、vial内に窒素ガスを吹き付け、Chloroformを飛ばす。

更にvialを一晩脱気し、残存するChloroformを飛ばす。最後にvial内に窒素ガスを吹き付け、使用時まで-80℃に保存しておく。

2)プレートの準備(結晶化ロボットを使わない場合のみ必要なステップ)

(結晶化ロボットを使用する場合、専用のプレートが各社から販売されているため、このステップは不要)

96穴両面シール アクリル系(以下、96穴アクリルシール)を6x2ウェル分ずつ8枚に切断する。切断したアクリルシールについて、片側のみシールを剥がし、Micro slide glass 76x26 mm に貼付ける。(Slide glassはシリコナイズされたものを使用することが推奨されているが、必須では無い。) 以上の要領でプレートを複数枚作製し、使用時まで保管しておく。

3)LCPの調製と膜タンパク質の再構成

ブロックインキュベーターを用い、40℃程度の温度で、-80℃に保存しておいたMO(MO+Cholesterolの場合も同様)を融解する。15-20分かかるため、その間に結晶化用タンパク質を超遠心し、細かいチリや不溶物を落としてしまうと良い。

Hamilton syringe 100μL、2本(それぞれシリンジA、Bと呼ぶ)を用意し、シリンジAにLCP Syringe Coupling(以下、カップラー)を接続する。シリンジA、カップリング、シリンジBの総重量を測定し、値をメモする。この際シリンジA、Bにteflon ferruleがはまっていることを確認しておく。

融解したMO 約30μLを200μLチップで吸い取り(粘性は高いがシリンジの奥に差し込めなくなるのでチップの先端は切らない)、シリンジA+カップラーの底部からなるべく泡が入らないようゆっくり入れる。その後、シリンジAの底部からプランジャーを差し込み、ゆっくり押し込んで行く。この時多少の泡はプランジャーを押し込む過程で抜けて行く。MOがシリンジA+カップラーの先端まで到達したら、その状態で再びシリンジA、カップラー、シリンジBの総重量を測定し、値をメモする。今回の測定値から先ほどの測定値を引き、MOの重量とする。

シリンジBにHamilton RN Needles(22/2”/3)S(以下、長針)を接続し、結晶化用タンパク質溶液と同じ組成のbufferで一度シリンジB内部を数回洗う。その後、同じ長針を付けたままMOの重量に対して重量比でMO:タンパク質溶液 = 6:4となるようタンパク溶液を吸う。この際シリンジB内部に泡が入らないよう注意する。シリンジ内部に空気が入らないよう注意しながらシリンジB先端の長針を外し、シリンジA+カップラーに接続する。

1秒に1回程度のペースでシリンジA、Bのプランジャーをそれぞれ押し込んでやる(目安は100-500回程度)。この過程でMOはLCPに相変化すると共に、LCPにタンパク質が再構成される。混合溶液が透明になったらLCPの調製、及び再構成完了である。

4)結晶化

(ここでは結晶化ロボットを使用しない結晶化法について紹介する。結晶化ロボットを使う際にはHamilton gas-tight syringe 10μL、Hamilton PB-600 Repeating Dispenser、Micro slide glass 76x26mm、Fisherfinest Premium Cover Glass 60x24mm 、96穴アクリルシールは不要となり、代わりに結晶化用プレートが別途必要になる)

Hamilton gas-tight syringe 10μL(以下、シリンジC)を Hamilton PB-600 Repeating Dispenser(以下、ディスペンサー)にセットする。この際プランジャーは根元まで押し込んでおく。ステップ3で調製したLCPをシリンジA、Bのどちらか片側に完全に寄せてから(ここではシリンジA側に寄せたとする)、シリンジBを取り外す。シリンジA+カップラーをシリンジCに接続し、シリンジAのプランジャーをゆっくり押し込む。この操作によってシリンジC内部にLCPが充填される。(一回に移せる量は7μL程度。)

シリンジCの先端からシリンジA+カップラーを取り外し、代わりにHamilton RN Needles(26/0.375”/3)(以下、短針)を接続する。乾燥を防ぐため、シリンジA+カップラーの先端には再びシリンジBを接続しておく。

ステップ2で作製したプレートを用意し、残った片面のシールを剥がす。ディスペンサーを使用して、プレートのウェルに200 nLずつ(タンパク質を含む)LCPをスポットする。(ディスペンサーはセットしたシリンジの1/50体積の溶液をスポットするようになっているため、10μLのシリンジをセットした今回のケースの場合、LCPの体積は1条件辺り200nLとなる。)

LCPの上に結晶化条件の溶液 1 μL を素早く被せる。この際LCPの乾燥を防ぐため、8連ピペットを利用すると良い(8連ピペットの6箇所にチップをはめる)。12ウェル全てにLCPと結晶化条件をスポットし終わったら、素早くFisherfinest Premium Cover Glass(以下、cover glass)を被せる。そのまま20℃の結晶化インキュベーターに保存する。

使用済のシリンジ、カップラー、短針、長針は100 %エタノールでよく洗浄する。汚れが落ちにくい時はChloroformを使うと良い。

5)結晶観察~結晶の回収

LCP法で結晶化を行った場合、結晶の析出には早くて数時間、遅くて1ヶ月ほどの時間がかかる。時間を見つけては小まめに観察を行うのが望ましい。観察の際には偏光顕微鏡を用いると微小結晶の発見が容易になる。コストの問題が解決出来れば、UV顕微鏡やSONICCシステム(7)を利用するのも有効だと思われる。図2にLCP法によって得られた微小結晶の例を示す。

結晶が得られ、その成長が停止した後は結晶を回収する必要があるが、その際、結晶の析出した条件におけるMOの状態相を見極めることが重要になる。

(i)沈殿剤の濃度が低く、MOの粘性が高い場合
MOの状態相はキュービック相のままであると考えられる。MOがクライオプロテクタントとして働くため、用意するハーベスト溶液は殆どの場合結晶化条件の組成そのままで良い。

(ii)沈殿剤の濃度が高く、MOの粘性が低い場合
MOの状態相はキュービック相からスポンジ相に変化していると思われる。サンドイッチ法で結晶化した場合、この状態相のまま結晶を回収するのは難しいため、結晶化条件の組成から沈殿剤濃度を下げたものを調製し、ハーベスト溶液とする。

(ただし、近年「状態相を変化させずに結晶を回収する方が好ましい」との意見も散見される。この場合結晶回収の難易度はあがるが、状態相の変化が結晶へ与える影響を最小限にすることが出来る。)

まず、Capillary Cutting Stone(以下、ガラスカッター)を用いて、ウェルに各頂点が接するような大きさの四辺形の傷をつける。次にNeedle Probe Set 4 tools and 1 handle(以下、ニードル)を用いて四辺形の対角の頂点2カ所に穴を空ける。一方の穴から3μL程度のハーベスト溶液を添加する。(ii)の場合、このステップでMOの状態相がキュービック相に戻る。

*特にこのステップについてはCherezov博士のLab HP(http://cherezov.scripps.edu/harvesting.htm)に図入りの解説が載っており非常に分かり易い。参考にして欲しい。

ニードルを用いて、注意深く、四辺形の傷を更に深くしていく。四辺形部分(以下、フタと呼ぶ)が完全に他の部分と別れたら、そのまま注意深くフタを裏返して剥がす。このとき、キュービック相がウェル側に残るかフタ側に残るかは分からないため、フタを勢いよく剥がしてどこかに飛ばしてしまわないよう細心の注意を払う。

キュービック相が付着した側にハーベスト溶液を更に2-3μL添加する。結晶の大きさに適したMicro mount loopを選び、キュービック相に埋もれた結晶を回収する。この際、脂質の持ち込みを極力減らすために別のmicro mountを用いてまず、目的結晶の周りの脂質を除いてやるのも一つの手である。

結晶を回収したloopを素早く液体窒素に浸け、loopを凍らせる。

工夫とコツ

LCPの調製

空調によって実験室の温度を一定に保っていても(20-25℃)、特に冬場にLCP法を行う場合、シリンジAにMOを入れてから、タンパク質を入れたシリンジBを接続するまでの間にMOが凝固してしまうことがしばしばある。そのまま力づくでプランジャーを押すことも可能だが、シリンジの摩耗を早め、最悪の場合シリンジを破損しサンプルをロスしてしまう危険性がある。こういった場合、シリンジA+カップラーをあらかじめMOと一緒にブロックインキュベーターで加温しておくと良い。

シリンジAとシリンジBを接続し、MOとタンパク溶液を混合する際、保冷剤や氷でシリンジを少し冷やしながら混合を行うとLCPの形成が促進されることがある。ただし、過度の冷却はMOを凍らせてしまい、タンパク質にもダメージを与えてしまうので注意する。

結晶化

LCPのスポット時に乾燥が気になる場合、加湿器を使用すると良い。ただし、マニュアルでの結晶化は、ロボットを使用する場合と比較してLCPのスポッティングからカバーガラスを被せるまでの時間が非常に短く、本プロトコルの方法ではLCPの体積も200 nLと比較的多いので結晶化室の湿度がある程度高ければ、必ずしも加湿器を利用する必要は無い。

本プロトコルではサンドイッチ法による結晶化を紹介したが、ある程度結晶化条件が定まった後はシッティングドロップ法による結晶化を試みるのも有効である。この場合、微小結晶を発見するのが難しくなる代わり、(特にスポンジ相からの)結晶回収が非常に容易になるというメリットがある。

初期スクリーニングに使用する結晶化条件についてよく質問を受けるが、市販のスクリーニングキットは通常の蒸気拡散法に最適化されているため、LCPを破壊してしまうような条件が多く含まれており、スクリーニング効率は余り高くない。現時点ではスクリーニング効率の問題に目をつぶるか、自作のスクリーニングキットを調製するのが良いかもしれない。(ただし、現在筆者らはLCP法に適した自作のスクリーニングキットを販売予定である。)

結晶観察

LCP法に慣れていない場合、塩の結晶や脂質の結晶とタンパク質の結晶の区別がつかない場合があるかもしれない。結晶の形や析出の仕方には様々なパターンが存在するが、一つ経験的に言えることは、LCPドロップの外側かつ結晶化条件溶液の内側に析出している結晶は、ほぼ確実にタンパク質の結晶ではないということである。同様に、LCPドロップ内に結晶が出ているが、同様の結晶がLCPドロップ外にも出ているといった場合も、その結晶はタンパク質由来ではないと考えてよいだろう。

結晶の回収

結晶がスポンジ相から得られた場合、脂質をキュービック相に戻すために沈殿剤濃度をどこまで下げるかが問題となる。沈殿剤濃度を下げすぎると結晶にダメージを与えてしまうが、沈殿剤濃度を下げなければ結晶をスポンジ相から直接拾うことになる。また、キュービック相とスポンジ相が互いに遷移する沈殿剤濃度は、沈殿剤の種類やその他の結晶化条件の組成によって左右されるため、この操作にはある程度事前の試行錯誤が必要になってくるということを留意しておきたい。(ただし、慣れればスポンジ相から結晶を直接回収することも可能であり、近年「状態相を変化させずに結晶を回収する方が好ましい」との意見も散見される。この方法の場合、結晶回収の難易度はあがるが、状態相の変化が結晶へ与える影響を最小限にすることが出来る。また、サンドイッチ法ではなくシッティングドロップ法で結晶化を行うことで、スポンジ相からの結晶回収を容易にすることが出来る。)

*シッティングドロップ法で結晶化を行う場合、LCPの容量や被せる結晶化条件の容量はサンドイッチ法と同様、それぞれ200 nL、1μLで問題ないが、最適化を行うことを強くお勧めする。リザーバー溶液の容量は500μL程度で十分である。
*PEG400の場合、25%前後の濃度がキュービック相とスポンジ相の分かれ目になる。

ハーベスト溶液を被せた後や、ウェルを開けた後には結晶を見失いやすいため、微結晶の回収時には、偏光板の入った顕微鏡を使用することを強くお勧めする。偏光の強い結晶の場合、10μm程度の微結晶であっても偏光板の入った顕微鏡を使用すれば結晶の回収は容易である。

実際の手順について

本プロトコルで説明した操作手順の多くは、オンラインジャーナルであるJournal of visualized experiments(JoVE)で実際に動画としてみることが出来る(8,9)。LCP法の手法に関する論文(10)と併せて是非参考にして欲しい。

文献

  1. Landau, E. M. & Rosenbusch, J. P., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 93, 14532-5 (1996)
  2. Cherezov, V. et al., Science 318, 1258-65 (2007)
  3. Rosenbaum, D. M. et al., Science 318, 1266-73 (2007)
  4. Kato, H. E. et al., Nature 482, 369-74 (2012)
  5. Liao, J. et al., Science 335, 686-90 (2012)
  6. Rasmussen, S. G. et al., Nature 477, 549-55 (2011)
  7. Kissick, D. J. et al., Anal. Chem. 82, 491-7 (2010)
  8. Caffrey, M. & Porter. C., J. Vis. Exp. 45, e1712 (2010)
  9. Liu, W. & Cherezov, V., J. Vis. Exp. 49, e2501 (2011)
  10. Caffrey, M. & Cherezov, V., Nat Protoc 4, 706-31 (2009)